中学二年生。
僕は同級生の女の子がとてもとても好きになった。
彼女は、大人しくて、それでいて内に秘めるものを感じる人だった。
だからかどうかわからないが、とても足が速かった。
彼女と話しをしようにも、学校ではなかなか勇気が出ずに話しかけられなかった。
電話しようにも、今みたいに、誰でも携帯電話を持っていることはないから、家に直接かけるわけで、それはそれは、とても勇気のいることだった(楽しかったわけだが)。
彼女への思いが募っていく日々のなか、たまたまテレビでドラマをみた。石田ひかりが出ていた。僕の勝手なイメージで、彼女は石田ひかりにかぶっていて、そのドラマのなかで石田ひかりが、失恋して、号泣?していた。そのシーンをみて何故か思った。
(告白しよう)
次の日、公民館の横の電話ボックスから電話をかけた。
思い切っていった。好きです。
少々の沈黙のあと、彼女はこう言った。
今好きな人がいるので、ごめんなさい。
中学三年生。
なんの因果か、僕はまた、彼女と同じクラスになった。
しかし、僕の告白以来、彼女とはしゃべらなかった。
無意味に大人ぶっていたのだ。
ふとしたことで目が合えば、なんともいえぬ、いやな緊張感バリバリの空気が、お互いに流れていた。
僕はと言えば、とうに別の人が好きになっていた(彼女もまた足がはやかった。余談だが、かわいそうな僕は、すぐ報われぬ恋に落ちるのだった。彼女には好きな人がいて、僕はまたフラれることになる)。
だから、告白したこと、僕が好きだったこと、そういったことの整理ついていたが、無意味に大人ぶっていた僕たちに、邂逅はなかった。
それでも日々は進む。
十月。
体育祭。
クラス対抗男女混合リレー。
クラスで、代表を出して、リレーするのである。
男子五人、女子五人。
うちのクラスは、足の速いやつが多かった。
そこそこ足の速かった僕は、選手に選ばれた。
そして、件の彼女も、足が速かったので、選ばれた(ちなみに、僕の好きな人も選ばれた)。
クラス対抗男女混合リレーでは、男女が交互に走る。僕は女子からバトンを受け取って、女子にバトンを渡す。
みんなで順番を決めた後、僕は喜び、そして驚愕した。
僕にバトンを渡す人は、僕のとてもとても大好きな人だった。
僕がバトンを渡す人は、告白以来口すら聞いていない彼女だった。
なんてこったい!
えもいわれぬ気持ちを抱えたまま、本番を迎えたのだった。
・
・
・
僕たちのクラスは、独走態勢だった。
だって、本当に速い人ばかり集まっていたから。
いよいよ僕が走る番だ。
大好きなあの子から、バトンをもらう。
気分は最高である。
君の気持ち、受け取った!みたいな。
あとはおれに任せとけ!みたいな。
勘違いでもいい、それをつなげるのがリレーなのだ。
全速力でかける。
彼女が見える。
バトンを渡す。
おれの気持ち、うけとれい!
ぼとっ
僕の気持ちは、受け取られなかった。
いや、彼女は、僕の気持ちを、正確に受け取った。
どちらにしても、バトンは落ちた。
そんな思い出。
(余談だが、バトンを落として確か三位に転落した我がクラスは、後続のアホみたいな頑張りで、結局優勝したのでありました。)
というわけで、ミュージッカルバトン受け取りました。
ガバチョくん、gumちゃん、Dai-Changありがとう。
■Total volume of music files on my computer
(コンピュータに入ってる音楽ファイルの容量)
347MB
少ないねー
データじゃあんまり音楽聴きません。
■Song playing right now
(今聞いている曲)
何も聴いてない。
■The last CD I bought
(最後に買ったCD)
Elis Regina「Motreux Jazz Festival」
友人がCD-Rで持っていたが自分で欲しかったので買った。
■Five songs(tunes) I listen to a lot, or that mean a lot to me
(よく聞く、または特別な思い入れのある5曲)
・浅香唯「C-Girl」
生まれて初めて自分のお小遣いで買ったドーナツ盤。まだCDはなかった。アイドルに憧れる、中学一年生。正直恥ずかしいが特別な思い入れはある。
・Beatles「Let it be」
高校一年生のとき、なんとなく格好よさそうなのでLPを買って、中学時代の友人と、部屋の明かりを消して、爆音で聴いてみた。音楽を聴いて、目からションベンちびった初めての体験。
・エディット・ピアフ/越路吹雪「愛の賛歌」
僕のカラオケの技付き十八番であり(唄いながら嫌がる相手の肩に手を置きそっと膝に座る)、ニカさんもカバーしてる。学生時代、カラオケは嫌いだったが、行くと必ず唄った。
・アントニオ・カルロス・ジョビン&エリス・レジーナ「三月の水」
最高の作曲家に、最高の歌手に、最高の演奏に、最高の笑顔が揃ったら、言うことないです。僕の中で、20世紀最大の名演。
・風博士「猫風」
自分がつくった曲の中ではじめて、自分は人前で演奏した方がよい、と冷静に思わされた。
■Five people to whom I'm passing the baton
(バトンを渡す5人)
バトンは受け取ったのに、気持ちは受け取ってくれなかったあの子。
結局最後まで、気持ちも、バトンも、渡せなかったあの子。
ルールには外れるけど、この二人にバトンを渡したい。
あれから15年(!)経った今、彼女たちは、どんな音楽きいてるんだろう?
風博士は、彼女たちの心に、届くかな、響くかな・・・